前頭前野 vs 大脳基底核

前回は、経験の重要性について書きました。
今回は、皆さんの症状を伺い、施術方法や経穴を決める際に、その場で直感的に浮かんだストーリーに従って進むと、良い結果を得られるというお話です。

原因や要因をあれこれと推測し、それらに合わせた施術方法を何パターンも検討していくうちに、収拾が付かなくなります。これでは、治療の効果が期待できません。

私は、直感と経験の関連性について以前から強い関心を抱いていました。この事は、以前にブログでも取り上げています。

経穴(ツボ)はどうやって決めるの?
続・経穴(ツボ)はどうやって決めるの?

 

たとえ経験が浅い場合でも、十分な時間が与えられれば、調べて施術方法を決めることができるでしょう。これは、「考える」部位=前頭前野を使っていることになります。

鍼灸施術の現場では、ひらめきや、即断即決が日常的に行われています。

そこで重要になるのが大脳基底核(人間が繰り返し行った経験や知識が長期的に記憶される場所)です。大脳基底核の機能として、無意識のうちに判断を下す「直感」の発揮がありますが、これは経験(習慣的運動)の蓄積によってより高まっていきます。

私は、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の免許を取得後の修業時代、忙しい治療院で働いていて、一日に60人の患者さんに鍼をすることも珍しくありませんでした。

 

来院数が多いだけでなく、来院頻度も高く、ほぼ毎日、という方もたくさんおられました。つまり、施術効果の検証がしやすい環境であったといえます。対応する症状も多岐にわたり、頭の中の記憶領域に多くのデータを蓄積することになったわけです。

 

この経験が、直感力による、短時間で最大の効果を得る、施術スタイルの基盤となっています。鍼灸マッサージのキャリアにおいて、とてもラッキーなスタートを切ることができたと思っています。